野田知佑さんの「ユーコン漂流」を読んだのは、今から10年以上前だった。カヌーイストでアウトドアライターの野田さんは今までに世界中の川を旅している。ユーコン漂流はカナダからアラスカへと流れるユーコン川を、上流から河口までの3,000kmを漕破した旅行記。北の大地の澄んだ空気を感じさせてくるようなこの本を読むと、「あー、いつか私も・・・」と思ってしまうのだった。

そんなわけで、カヌーをやってみたいと思っていたのだが、小豆島のことを調べていたら、シーカヤックのツアーがあった。
シーカヤックとは海でやるカヌーのこと。「むむ。こ、これは・・・。」と思って、参加した。

今回知ったのだが、一応カヤックはカヌーと同義で、天板があるカヌーのことを正式にはカヤックと呼び、天板がないカナディアンカヌータイプのオープンデッキタイプのものをカヌーと呼ぶらしい。

海でやるとなると「それは、ちょっと危険なんじゃないか・・・」と思ってしまうのだけれど、意外とそうでもないらしい。むしろ川だと「瀬」があって、流れの速い場所とかではそれなりに危険も出てくるのだが、海であれば(もちろん風や波が穏やかという条件はあるものの)そうそう危険はないらしい。流れがあるか、そうでないかの違いだろうか。

インストラクターの「のぶ」さんと「わかば」さんに、色々と教わった。

今までにシーカヤックのツアーに参加した人は沢山いるが、沈(ちん)した・・・転覆すること・・・人は一人もいないんだそうだ。へーそんなもんなのですか!
当日は「凪(なぎ)」といえるほど波が全くなかったのだけれども、このような状態で沈するには「意図的に」でもやらないかぎり沈することもなかなかできないらしい。

野田さんは著書の中で度々「カヌーなんて簡単だ。すぐに出来るようになる。」ということを書いていた。どんな「道」も奥深さというものが例外なくあるだろうから、この言葉はベテランならではの高次の箴言・・・かとは思うが、もしその言葉を「カヌーなんて簡単に楽しめる」と解釈するのであれば、全くその通りだと思った。
インストラクターのお二人から10分ちょっと注意事項や漕ぎ方などを教わったらもう出発。ちゃんと漕げるのか不安もあったが、なんとかなるものです。どんどんカヤックは進んでいく。まぁ、敢えて言うと、足で操作する「舵」は少々慣れが必要だった。パドルの漕ぎ方でも方向は操作できるので、それとのバランスが難しかったのだが、これもしばらくしたら慣れた。

この時乗った艇は2人艇で、同乗の「とも」さんはだいたい私と同じ年齢の男性。私が後ろの席に乗り、彼は前。舵の操作は後ろの席からしか行えないので、その分仕事が増える。後から知ったのだが、2人艇は舵の有る無しに関わらず後ろが方向を決めてしまうので、ハッキリ言うと後ろの方が「面白い」らしい。前席に乗ると「漕ぐだけ」になるようだ。というわけで、もしかすると彼より私の方が楽しんだのかも知れない。ふふっ。ともさん、すいませんね。


©Dream Island のぶさん撮影

ところで、彼はインストラクターの「のぶ」さんのお兄さんなのだった。普段はカヌーとは全く縁のない生活を送っているらしいが、カヌーのインストラクターをしている弟のぶさんを訪ねて、はじめて小豆島に来てカヌーに挑戦したらしい。いいですね、こういうの。しかしながら、この二人、兄弟なのに顔が全く似ていない。「異父兄弟なんじゃないですかね?」と言いたかったが、言わずにおいた。私ももう大人なのだ。

野田さんは「カヌーに乗ると人は自由になれる」と書いていたけれど、その感覚はとても分かる。普段、自由に移動することが出来ない川や海の上を自分の力でスイスイと動くことが出来る。陸地からは行くことが出来ない海岸や無人島に行くことだって出来る。スピードも結構出て、思いっきり漕ぐと10km程は出るらしい。これは結構なスピードだ。



小豆島ふるさと村のある池田湾を観音崎から沖野鼻にかけて漕いだ。全部の行程で3~4kmほどだろうか。途中、無人のビーチで上陸。ライフベストをつけたまま、海で泳いで遊ぶ。当日天気は曇で既に9月中頃ということで泳ぐには少々時期が遅かったが、水温はまだまだ高いので寒くはない。のぶさんとわかばさんの用意してくださった、紅茶や善哉(ぜんさい)を皆でいただく。美味しい。



©Dream Island わかばさんが撮影したのぶさん

のぶさん、わかばさん、ともさん、他の参加者の皆さん、ありがとうございました。とても楽しかったです。楽しかったとしか言いようがない。
またどこかでカヌーをやりたいと思っています。