震災に関連して、デマや出所の不明な情報が沢山出てきました。

デマには、地震当日の千葉の化学工場爆発で有害物質が出るとか、漫画家が15億円を寄付するとかいったものから、地震自体が地震兵器によるものであるといったほとんど荒唐無稽と思われるようなものまで色々ありました。

Twitterなどで情報が拡散してしまうと、どこが情報の発信元か分からなくなりますが、Googleのリアルタイムという機能を使うと、その情報が初めてネットに書き込まれた所まで遡れることがあります。(必ず遡れるというわけではないようです)。

いくつか調べてみました。

デマを流すというと、とても悪い事をやる人というイメージがあります。
しかし、調べてみると「えっ、いったい誰が悪いの?」と言いたくなるような、特に誰を責めることが出来ないというケースがあって驚きます。

千葉の化学工場爆発の件の出元は、文面から察するに、恐らくまだ若いだろうと思われる千葉の女性でした。これはTwitterに出た時点までしか遡っていませんので、彼女は別のサイトを見て、この情報をTwitterに書き込んだのかも知れません。その後、しばらくして情報が拡散されていき、ガスタンクの火災を起こした会社からこの情報が否定されるまで、拡散のピークを迎えます。
この人のツイートを読む限り、いたって普通の女性という印象を受けます。少なくとも、特に何らかのバイアスを持って書き込むような人ではありません。恐らくどこか他のサイトで読んだ情報を単なる「善意で」書き込んだのではないでしょうか?また、拡散した人も同様です。単に、地震の被害を少なくしたいという思いから、情報を拡散したと思われます。

漫画家が15億円を寄付するという件は、2ちゃんねる内でジョークとして語られていたことを、大阪府の男性がツイッターでつぶやいてしまったことに端を発します。その後、その漫画家が否定して、では誰が情報を広めたのか?ということになり、この男性が大元ということが分かり彼はネット上で随分非難されたようです。しかながら、もともとジョークだったことであり、この人も全然悪い人じゃないというか、他の書き込みを見ても自分の好きなことを仲間内でつぐやきあっているような人で、この件で非難されたことに対しても恐縮して平謝りでした。

デマを流す悪い人を見つけられると思っていたのに、私は困ってしまいました。
それと同時に「恐ろしい」と思いました。なぜなら、悪意がなくても、単に不注意や善意だけでもデマが作られるからです。

もっとも、大元に悪意があるデマも多いでしょう。

私からすると、地震兵器のデマは、そのうちの一つだと思います。
冷静に考えれば、マグニチュード9という破壊力は現存する最大の核兵器の数十倍の大きさですし、プレートの内部にどうやって埋め込むのかも謎です。そもそも、核兵器の実験をやると地震波が計測されるので行われたことが分かるのですが、通常の地震とは波形が異なるはずです。もし兵器であるなら世界中の地震計の情報から通常とは違うということが分かっているはずです。
・・・と考えられれば良いのですが、災害で焦っているとそうなれない人もよくいます。
また「地震兵器がないとは証明できない」という論法も、デマの蔓延る原因かと思います。
もしかするとあるかも知れない・・・、と思わせるのがこういう陰謀論(と言い切ってしまいます)を取る人に多く見られる論法です。
このようなものにはデマというレッテルを貼っても良いのかも知れないですが、それでも「単に提案しているだけです」と逃げることもできますから、困ったものです。

いずれにしても、情報を伝達するという行為は難しいのだな、とあらためて感じました。

災害時などは、情報が錯綜します。未確認の情報が沢山出てきて、情報の受け手はその雑多な情報の中で取捨選択しなければなりません。
今回の震災で思ったのは、選別された情報、承認された情報の有り難さです。
ネットは確かに有益で、誰でも情報の出し手になれて、受け手にもなれる。これは素晴らしいです。
反面、今回ほど既存メディアの有り難さ、特にNHKやTBSニュースバード、各新聞のサイトの存在感を感じたことはありませんでした。
私は普段NHKは見ません。地デジも、アナログも地上波も見る機器がないので見ることが出来ないです。よって、受信料を支払ってもいません(その義務がありません)
とはいえテレビがないわけではなく、チューナーが付いていない普通のパソコン用ディスプレイがあります。これのHTMI端子が光テレビのチューナーに繋がっています(ですからTBSニュースバードや英BBCを見ることは出来ます)
震災後、NHKはUstreamで見ることが出来ましたので、随分見させていただきました。やはりNHKの報道の安定感を強く感じました。とにかく安心。
もちろん、情報はNHKというフィルターを通ってきていますから、全ての情報が見られる訳ではないかも知れませんし、バイアスが掛かっているかもしれません。そうはいっても、ネット上のデマかも知れない情報を浴びて、必要であれば一次ソースを探しに行かなければならないようなことをやっていると疲れてしまうことに比べて利益もずいぶん大きいです。情報の裏を取りたいときも、NHKで放送された情報なら確かだ・・・と考えられます。
これは災害時だから特にこのように思うのでしょう。

そして今回、「情報を承認する」ということの大切さを強く感じました。

NHKは放送事業者ですが、ネットにも記事を載せるようになっています。今回は一時的にではありますが、ustreamでネットに直接放送を行いました。なにももはや放送にこだわることはない思います。必要とされているのは、情報を検証して、裏を取って承認してくれる機関です。嘘の情報が一旦流れてしまうのはしょうがないですし、そこを制限するべきではないです。しかし、世の中のコンセンサスになるべき情報にはしっかりとした裏付けがないと困ります。ネット社会が始まってから、もう15年程でしょうか。やはりまだ混沌としています。便利にはなりました。情報の多いことは基本的には良いことです。しかし、情報の混乱を増やしてしまっていることは今回流布したデマを見ても確かなところでしょう。別にNHKはじゃなくても良いのでしょうが、NHKの立ち位置の公共放送という位置づけをそのまま未来に持っていくのなら、公共放送→公共情報 になると私は思います。

いずれにしても、情報の交通整理が行えて、間違った情報、怪しい情報がそうであるときちんと確認できる、そういう社会になって欲しいと思います。