100kmのトレランレース。夜中の0時にスタートして、夜通し走って10時間以上かけてゴールする。

多くの人は「随分大変なことをする人がいるものだなぁ」と感じるだろうし、「なんでそんなことをするのか?理解できない。」と思う人もいるかも知れない。

自分がなぜこの「おんたけウルトラトレイル100km」をどうしても完走したいのか?・・・と考えてみても、どうにも明確な答えはないのですが、なんとしてでも完走したいという思いは確かなのでした。この場合「なぜ走るのか?」は、恐らく「なぜ生きるのか?」という問いに等しいのだと思います。

日付が変わると同時に1,000人近くのヘッドライトを灯した大人が一斉に山に向かって走り出す・・・というこの光景はなかなかシュールで好きなのですが、これは野生動物の大群が移動している様を想像させてくれます。かなり野性的な行為。でも力任せで走りきろうとしても無理で、自分の力に応じた作戦が必要。3年前にリタイアした経験から、色々と作戦を練りました。

その一つは「序盤は抑えて余力を持って中盤の厳しい区間に臨む」ということです。序盤はどの選手もどうしても前のめりになります。オーバーペース気味につっこんでしまうのですが、ここは着いていきたい気持ちは抑えて、太陽が昇って暑くなる中盤に体力を温存しておくのです。前回は栄養補給でも失敗しました。補給が足らず、エネルギー切れを起こしてしまいました。これは通称シャリバテとも言いますが、こうなるともうペースがガクッと落ちてしまいます。定期的な補給は絶対必要です。自身への心理的な制御が大事だということも、あらためて学んだ気がします。距離が長いのとどうしても「早くこの苦難から脱したい」と思って人間頑張ってしまうものなのですが、そうすると水や栄養の補給をおろそかにしてでも少しでも前に行こうとしてしまって、その結果エネルギー切れとか、余計な体力を消耗してしまったりするものです。先が長いのはもうどうしようもない。全体の中で今この瞬間に出来ることはなにか?一歩でも少しづつでも前に進むこと。今はこれをひたすら繰り返す・・・そんな風に自分をもっていなかなければならないと思います。



作戦は功を奏して、後半タイムが落ちることもなく、ほぼ平均的なペースで進むことが出来ました。

前回リタイアした第2関門から先に進めるのが夢のようでした。そこから先も長く、時には苦しみもありましたが、ゴールできるという確信があったのでそんなものは取るに足らないものでした。
最後の数キロ、舗装路に出てからもペースは落ちず走ることができそのままゴール。タイムは16時間15分34秒。

レース中は本当に色々なことが頭をよぎりました。終わってみると、1日とはとても思えない長い時間の旅をしていたように思えるのです。
その時なにを考えていたか?とても言葉に出来ないのです。言葉にしたいのですが、言葉にならない。
ここを言葉にしなければならないし、音楽にしなければならない。
でも、色々なことに感謝している時間が長かったことは確かです。
とても幸せな時間でした。